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1998年の日記・読書編


■コミック■「半熟探偵団」

作・我孫子武丸、画・河内実加「半熟探偵団」(全3巻)読了。作の我孫子氏はミステリ作家で、ゲーム「かまいたちの夜」のストーリーを作った人でもある。氏の「殺戮に至る病」は絶品でした。実は画の河内実加さんとお会いする機会があったので、これを機にイッキ読み。やー、面白かったです。どこまでがどちらの分担か、読んでいる側からははっきりと解らないのだが、基本設定の妙(第一巻の最初の数ページでひとり自宅で笑い転げていたのは私)やキャラクターの魅力、物語の...ああ、これでは全部ほめてしまう。個人的には、佐々木倫子さんのコミック「ペパミント・スパイ」や、TV「お呼びでない奴」(故・高橋**名前忘れた/所ジョージ/植木等が親子三代のおとぼけさんに扮していた名作)なんかを思い出しました。
 唯一残念な点は、3冊で終わってしまったこと。一気に読んだため、もっと読みたいという欲求不満が...。
 というわけで、近々河内さんの他の作品を買って来よう。(98.10.10)

■コミック■「漂流教室」

楳図かずお氏の「漂流教室」ついに待望の文庫化。昔何度も何度も読み返すほど好きで、愛蔵版などが出ているのは知っていたのだが、コンパクトにおさまる文庫版が出るのをここ数年心待ちにしていたのである。それが、ついに発売されていた。かなり嬉しい。
 そういえば「YAKATA」制作中に「漂流教室」の話になり、私が文庫化を待っているのだと言うと、作家の神山修一氏が「それは、愛蔵版を買わないと、文庫発売のフラグが立たないようになってるんですよ」とおっしゃっていたこともあった(つまり私が愛蔵版を買ったらばその後で文庫が出るよ、というギャグです)。
 現在まだ2巻までだが、オリジナル版の2巻分以上が収録されているように思う。閉鎖された空間でのヒューマンドラマというのが私は好きなのだが、このシリーズは特にその世界観(ディストピアな未来像)や、その中にあって必死に生き抜く主人公・翔をはじめとする少年たちの姿がとても魅力的なのである。次回配本が楽しみ(ストーリーは憶えちゃってるんだけどね)。
 それはそうと、「神の左手悪魔の右手」文庫版5巻以降は、まだ出ないのかなぁ。(98.08.30)

■コミック■「栞と神魚子」シリーズ

諸星大二郎氏の「栞と神魚子の生首事件」「栞と神魚子と青い馬」読了。先日「青い馬」の方を買ってきたら、どうやらシリーズ2作目だったので、昨日本屋に寄ったついでに「生首事件」の方を買い、一気に読む。諸星氏のコミックとの出会いは、SFマガジンに掲載されていた(と思う)短編で、木星だか土星だかの衛星から帰還した探険隊員が未知のウィルスのような物を持ち帰ってしまい、世界中の人間と機械が融け合ってしまう(融けた本人達は至福状態)というものだった。以来、その不思議な手触りが気に入って、結構チェックしている。特に妖怪ハンターシリーズがお気に入り。
 で、栞と神魚子(しみこ)のこのシリーズは、作者もあとがきで書かれているように、少女ホラー雑誌に連載されているわりにはホラーからひとつハズれている。楳図かずお氏のように絵そのものからにじみでるホラー性もなく、なんだか不思議な話、という感じの連作になっている。キャラクターもいい感じで、一度に2冊も読めてちょっと幸せなのである。しかしどうして「しみこ」なんて名前をつけたのだろう?(98.08.30)

■コミック■「センチメントの季節2」

榎本ナリコ氏の「センチメントの季節2」読了。連載は読んでおらず(コミック雑誌は買わないのです私)、表紙に惹かれて買った「1」がけっこう良かったので、「2」も購入。セックス描写もあるのだが、ポイントはそこではなく、登場人物達の「せつなさ」がイイのである。「せつない学生時代」というものにミョーに惹かれる私。やり残したことでもあったのだろうか。ジュヴナイル好きだしなぁ…。(98.08.30)

■ミステリ■「匣の中」

乾くるみ氏の「匣の中」読了。実はこの本を読むために竹本健治氏の「匣の中の失楽」も再読する。こちらは我が永遠の青春小説で、もう数度目の再読になる。その「本歌取り」ということで、この「匣の中」は期待しており、まぁなかなか面白かった。どの部分を支持するかで評価は変わってしまうと思うけど。途中、というか本編は、私は実を言うとそれほどのめり込めなかった。やっぱり一番良かったのは最終章「刻の迷宮」。さらりとした記述だったが、実はこのピンポン玉のシーンを、作者は一番描きたかったのではないだろうか(あくまで私感)。ラストは個人的には好き。でもこれって「ミステリ」というレッテルを貼って読者に届けているからびっくりなのであって、別ジャンルではよくあることかも、とも思うが。そういう意味でも、「匣の中の失楽」は素晴らしい。(98.08.27)

■SF■知性化シリーズ

「info」のページでもご案内しているが、シノハラステージング関連の公演が9月にいくつかあり、私は主題歌などを担当している。今回は、このチラシのデザインをしている「ifni visual works」について。
 結論から言ってしまうと、これは私。デザイン系の仕事をするときのペンネームなのである。ifniというのは、ディヴィッド・ブリンというSF作家の描く「知性化戦争」「サンダイバー」などの知性化(uplift)シリーズの世界で、人々の口によくのぼる「神様」の名前からいただいた。ただし原著を読んだ訳ではないので、綴りが不安。物語中の使われ方としては、「Oh my God !」の替わりに「イフニ!」と言う、そんな感じ。
 この知性化シリーズは、現在までに「スタータイド・ライジング」「サンダイバー」「知性化戦争」がハヤカワ文庫で翻訳されている。時は遥かな未来、人類は宇宙に進出し、様々な異星の宇宙人たちと交流している。地球人以外の総ての生命体が、遥かな過去において別の種族によって知性化され、また別の未開種族を知性化してその種族に対し「主族」となり、数千万年単位での使役期間を課して服従を強いている世界。その中にあって、地球人は唯一の「主族がいない(らしい)」知的生命体であり、また自らが知性化したチンパンジーとイルカに対し服従を求めず同盟関係を結んでいる点からも、他の種族から特別視されている。そんな中、人類・イルカ混成チームによる探査宇宙船ストリーカー号が偶然入手してしまったという、銀河の歴史を覆しかねない重要な秘密をめぐり、五銀河の覇権を狙う列強種族が抗争を開始。人類も否応なく戦乱に巻き込まれていく...。というのが、シリーズのストーリー。
 このシリーズの魅力の一つは、主人公達がポジティブだということ。冒険活劇的に、迫り来る困難や危機に対して果敢に立ち向かっていく姿は、作品を通して語られるブリンの「明日への希望」というメッセージのような気がする。また、登場する宇宙人達の個性豊かなこと。古き良きスペースオペラ的な荒唐無稽さを良い意味で持っていると思う。
 あとは、イルカやチンパンジーがとてもキュート。「スタータイド・ライジング」ではイルカたちが、「知性化戦争」ではチンパンジーやゴリラたちが主役である。
 難点としては、物語がまだ完結していないので、数々の謎が残されたままになっていること。早く続編出ないかなぁ、ほんと。
 というわけで、かれこれ10年前くらいから、ビジュアル関係の仕事の時にはこの名前・「ifni visual works(古くはifni video works)」を使っている。(1998.07.27)

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