「ピノキオショー'99」サウンドトラック制作記(1999.5) |
●はじめに 99年5月21日(金)〜25日(火)に池袋シアター・グリーンで上演される、劇団キャプテン・チンパンジー公演のサウンドトラックの制作記。「ピノキオショー」は今回で4度目の再演(改演を含む)で、キャプテン・チンパンジーの代表作。これまでの「ピノキオショー」のために書いた曲を中心に、新曲を加えてサウンドトラックを制作することに。CDも発売予定で、「夢の夢」と何曲か重複してしまいますが、同じ曲でも出来る限り新しく録音し直す予定ですのでこちらもどうぞ宜しく。(99.05.07)
精神科医、大風呂敷万太郎の元に連れてこられた少女はアンドロイドだった。
「ワタシハ、ニンゲンニ、ナリタイ・・・」 しかし人間達は彼女の機能を止めようとする。そして、 「ピノキオ、お前は生まれて来ちゃいけなかったんだ!」 神に使わされた天使が叫ぶ。 一体彼女にどんな秘密が隠されているのか? 彼女の運命はいかに! ●99.05.07(金) 坪田氏、演出の前原氏と初の打ち合わせ。当初は前作「ピノキオショー」「真ピノキオショー」からの曲ですべてまかなう予定だったが、イメージの変わった部分に新曲が欲しいということになり、詳細に打ち合わせていくと、けっこう新曲を書かなくてはいけないことが解る。日程的にもほとんど余裕がないので、手の付けられる部分から始めることに。とりあえず台本98ページまでチェックを済ませ、ここまでで使用する曲数は21曲、うち手直し無しで使えるのは9曲のみ。来週頭に次回打ち合わせを行うことにする。●99.05.09(日) 今日から実作業。稽古の都合上、芝居で使用する順番に曲を仕上げていくことにする。M01「黄昏2(仮)」(CD-02 訪れぬ闇の中で)、M02「リカとピノキオ(仮)」(CD-03 リカとピノキオ)、M04「緊迫(仮)」、M12「朝(仮)」を新たに作曲(ラフスケッチ)。以前の曲もできるだけ手を入れたいので、M03「その男大門大作」(CD-04)イントロ部分を新録。M05「エリプティック・ラヴ(オルゴール)」(CD-06)は以前のデータをほとんど全部手直しして新たに楽器を重ねる。M11「いざ、時計塔へ」(CD-11)は曲をバラす必要があるので新録。 M07「不気味な陰影画」(CD-07)、M08「恋に酔って」、M09「玩具のロボット」(CD-08)、M10「時計塔の時の精」(CD-09)は以前のマスターをそのまま使用できるので、とりあえず後回しにする。 ●99.05.10(月) 午後から作業。M13「迷子の大人たち」(CD-12)はテンポを少し早くするため新録。M15「抵抗(仮)」(CD-14 対立する素描画)は「一所懸命」(ピノキオショー)のリズムに別の曲をのせてラフを作曲。M19「ピノキオショー(オルゴール)」(CD-17)はM05「エリプティック・ラヴ(オルゴール)」(CD-06)と同様以前のデータを分解〜再構成する。以前のデータはクリックにあわせず完全に手弾きで弾いているのだが、聞き直してみるとリズムが荒い部分が気になる。分解〜再構成というのは、この音符のデータ(音の高さや強弱)をそのままに、クリックに合わせ直すという作業である。ひとつづつ手作業でずらし、ピアノでいうサスティンペダルのデータ(ペダルを踏んでいる間は鍵盤から手を離しても音を伸ばしていられる、というもの)を全て消去して「音の長さ」を伸ばし、音同士の重なり具合をコントロールする。けっこう時間がかかる。 M14「殺戮にいたる病」(CD-16)、M18「夢中楼閣の崩壊」(CD-13)は以前のマスターをそのまま使用できるので後回しに。午後3時、これから昼食。 ピノキオショーのメインテーマである「運命」(CD-01)のイントロ部分だけのテイクが必要になるため、これも新録。当時のデータは残っているのだが、楽器の接続方法が変わっているため音のあてこみに手間取る。ワープロでいえば、文書データは残っているが機械が新しくなったため印刷位置やフォントを直してやるようなものだろうか。ちょっとちがうか。一応終わったのが夜11時。これから夕食。 ●99.05.11(火) 午後、坪田氏、前原氏と打ち合わせ。これまでに作った新曲のラフスケッチを聴いてジャッジしてもらい、それと残った部分の曲指定をいただく(これに伴いM No.に若干変更有り)。新曲に関してはだいたいOKで、ほっとする。稽古で流して演出的に合わない部分がでるかもしれないので、とりあえずMDに落として持っていってもらうことに。なんせ日数がないのだ。その後M01「黄昏2(仮)」(CD-02 訪れぬ闇の中で)、M02「リカとピノキオ(仮)」(CD-03 リカとピノキオ)のアレンジ。一応終了する。あとはM00「運命」(CD-01)の新録もだいたい整備終了。 ●99.05.12(水) 坪田氏から電話で、前日に落としたMDが故障していて録音されていなかったとのこと。とりあえず必要な部分だけ再度落とすかもしれないということに。M27「エリプティック・ラヴ」(CD-22)、M22「ピノキオショー」(CD-23)、M10「玩具のロボット」(CD-08)新録。これは以前から考えていた別の企画のために録音し直そうと思ってデータをいじっていた途中だったので、それを流用。ほか、新曲のアレンジなどを仕上げる。 夜 前原氏から、全曲の尺が決定したとの電話。これでマスターに落としていくことができる。明日は別の仕事のためこちらは中断。明後日から作業再開の予定。 ●99.05.16(日) 金曜、土曜でなんとか作業は終了、あとはサイズ指定待ちの1曲を残すのみで、今日は朝からミックスダウン。午後に最後の1曲のサイズがわかり、その曲のオケを編集してvoiceを録音。それを含めてミックスダウンの終了は20:00。公演用のサウンドトラックは完成である。これからサントラCD用のマスタリング作業、ジャケットなどのアートワーク作業に移る。いよいよラストスパートである。●99.05.17(月) 一日ミックスダウン。終了後プロトタイプ盤を焼き、最終的なレベルチェックは明日。結局34曲入りということになりそうである。全曲新録音というわけにはいかなかったが、CD『夢の夢』と全く同じテイクは2曲のみに押さえることが出来た(他の重複している曲に関しては細部が異なっている別テイク/別ヴァージョンである)。99.05.18(火)● 今日は昨日焼いたプロトタイプ盤のチェック。マスタリング時にだいたい音量(音圧)をそろえてはいるのだが、全体を通して聞いてみないと意外にわからないものなので、いつも一旦焼いてから聞き直して、レベルと、その時にノイズや曲間などもチェックしているのだ。プロトタイプ盤で何曲かレベル調整の必要を感じてメモをとり、こんどはディスクマンに入れて外出。池袋・芸術劇場前の公園で空をみあげてかぜにふかれながらもう一度聞き直してチェック。ずっと悩んでいたボーナストラック「ただ一人の抵抗」(CD-33)を別ヴァージョンに差し替える決心をし、帰宅して修正、再度焼く。プロトタイプ盤でチェックした部分を再度チェック、そして全体をまたチェックして、一応OK。というわけで、マスタリング終了である。これで音の方の作業はすべて終了。あとはデータのバックアップを焼いたあと、ジャケットのアートワークにとりかかる(明日)。●99.05.19(水) ジャケットのアートワーク作業。今回はおおまかなイメージしかなかったため、実験しながら制作を進める。自分なりのキーワードは「ロボット」「世紀末(退廃的)」「空をみあげてかぜにふかれ」など。稽古の写真素材を利用してビデオノイズ(走査線)を加えた表ジャケットを作るも気に入らず、結局その写真は拡大して内ジャケに使用することとし、表はロゴとテクスチャだけにする。ちなみにテクスチャも、いつも使用するKAI POWER TOOLSではなく、稽古の写真素材を加工したもの。内容に比してちょっとTOO COOLだが、それもまたよし。 裏ジャケは、友人のチェシャ猫氏からお借りしたデジカメで機械の基盤を写すことにし、シンセなどのパネルを外したあげく、最終的には引退した愛機Macintosh IIciの内部基盤を撮影。チップのところに、ストーリーに登場する「C.D.S.(都市破壊システム)」と「LG-777(ピノキオのコードナンバー)」を書き込み、表ジャケとの統一感をはかるため色味を落とした深緑のテクスチャ(これも稽古写真を加工)を貼り込む。 文字書体はFUTURE。ちょっと読みにくいが、「真ピノキオショー」のサントラ(廃盤)でも同様の書体を使用していたので。 かくして作品は完成に至るのである。 ●あとがき というわけで、制作記も終了です。おつきあいいただきまして、ありがとうございました。 |
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